何か書けと言われたので…ハンコの話
同じくyukimuraくんに「何か書いてください!」って言われたので。
うちの研究室はセキュリティ全般を研究してますが、変わった研究として「ハンコの研究」をしています。
ハンコ、面倒ですよね。ハンコは日本独特と言っていい文化ですが(発祥の地である中国では日常では使われていない)、日本の事務部門の生産性を落としている元凶の一つだろうと思っております。だいたい印影は私文書を書証とするために助けになることはあっても(民訴法第228条第4項)、必須となっているわけではないので、他の適切な代替手段を使って「その文書の作成者とされている人(作成名義人)が真実の作成者である」ことが立証できれば、民間でのハンコは不要になります。
従来、デジタルの世界ではこの立証手段が電子署名だとされてきたのですが、令和の世になっても電子署名の普及は進みません。それには色々な理由があると思いますが、端的に言えば電子署名は色々と使いにくいのも確かです。そもそもメタデータを含めて1ビットたりとも変更を許さないような電子署名の使い方は、紙文書における三文判の使われ方とは全く釣り合っていません。そこで、私たちは「デジタル三文判」の研究をしています。もっとお手軽で直感的で、それでいて三文判と同程度以上の能力で「文書の作成名義人」を立証する技術です。詳しくはまた、発表した折りにでも。
それはさておき、その研究の一環としていかに現在の三文判が形式的証拠力として心許ないものであるかを示すための研究を平行してやっています。要は「イマドキの3Dプリンタを使えば、印影から印鑑が簡単に偽造出来るんじゃないの?」って疑問を明らかにするものです。とはいえすぐ思いつくことなので、先行研究がありまして、私が知る限りは以下のようなものがあります。
この研究を追いかけているのですが、いま、学生さんたちが3Dプリンタを使いこなし始めたところで、良い結果が得られつつ有りますので、そのうちご紹介できると思います。