【第2回】研究室OB・OGインタビュー

M2のYukimuraです。

第1回に引き続き、第2回の研究室OB・OGインタビューです。

上原研のOB・OGの先輩をお招きして、研究室での活動が社会人になってどう活きるのかや、学生時代の研究のお話などを伺いました。

第2回は2019年度(2020年3月)修士卒の廣澤龍典さんにZoomでお話を伺います。

自己紹介

ーこんにちは、よろしくお願いします。

廣澤:よろしくお願いします。

ー自己紹介をお願いします。

廣澤:2020年に修士で上原研を修了した、廣澤龍典です。現在はNTTデータのCSIRT(NTTDATA-CERT)で働いています。
普段は、インシデント対応やセキュリティ関連の情報収集業務を行っています。ただし、インシデントは定期的に発生するものではなく、頻度をコントロールできるものではありません。そのためインシデントが起こっていない時は、悪性URLの調査やダークウェブの調査を行い、トレンドの把握やネットワーク遮断リストの更新等を行っています。

ー2020年の卒業というと、ちょうど新型コロナウイルスの流行が開始した時期ですね

廣澤:そうですね、私の学年は大学院の卒業式が中止になってしまい、残念な思いをしました。
ただ、私の場合は新居探しは終わっていたことや、卒業旅行も計画していなかったので、意外と苦労はなかったように思います。
入社後も、弊社では元々テレワークの試験運用をしていたこともあり、大きな障壁はありませんでした。
ただ、私自身初めての東京暮らしで、東京には人が多いイメージだったのですが、初めて通った渋谷のスクランブル交差点に人がほぼいなかったことにはとても驚きました。緊急事態宣言の発出中で外出している人が少なかったためだと思いますが、衝撃を受けたことを覚えています。

普段の業務について

ー普段のお仕事内容について、詳しく教えてください

廣澤:先ほども紹介した通り、通常時は情報収集や社内システムの運用を行っています。
具体的には、悪性ドメインの収集をし、社内のURLフィルタに投入する。という作業を担当しています。
一概に悪性ドメインの遮断といっても、機械的にURLフィルタリングをしてしまうと誤遮断をしてしまったり、他の社員の方が利用しているサイトにアクセスできなくなってしまう場合があるので、慎重に作業をしていますね。
また、MISP (Malware Information Sharing Platform,マルウェア情報共有プラットフォーム)を活用した情報共有なども行っています。
NTTグループ内で情報共有をしているため、グループが標的とされた攻撃の情報を収集することで迅速に対応できるという強みがあります。

ー業務の中でコーディングをする機会はありますか?

廣澤:NTTDATA-CERTが使うツールは内製が多いので、コーディングする機会は他の部署に比べて多いと思います。他社では外注しているという話を聞きますが、内製によってチームの技術力が維持されるというメリットもありますね。

学生時代の研究

ー学部・研究科時代はどのような研究に取り組んでいたのでしょうか

廣澤:学生時代はブロックチェーンを軸に研究をしていました。
卒業論文まではBitcoinのマネーロンダリング対策を研究していて、修士ではブロックチェーン(スマートコントラクト)を用いてガチャシステムを実装する、という研究を行っていました。
ガチャでアイテムが公表された確率どおりに配布されているかは、ユーザからは確認できませんよね。
これを検証するには、ユーザが確率計算を行えないといけないのですが、この問題の解決にブロックチェーンを用いることが最適であると考えました。

ー廣澤さんの修論は、情報処理学会論文誌に採録されていましたね

廣澤:はい、卒業前に上原先生から「掲載を目指してみないか」とご提案いただいて、実際に情報処理学会論文誌61巻12号に採録していただくことができました。
この研究には、しっかりとブロックチェーン(実装したガチャシステム)を維持するモチベーションがユーザにある点で、ブロックチェーンの考え方を大事にした、という誇りのようなものが私の中にあります。

ー研究室配属前からブロックチェーン関連の研究をしようと考えていたのですか?

廣澤:いえ、研究室配属当時はマルウェア解析などに憧れていて、そういうテーマがセキュリティ研究の“王道”だと考えていました。当時はランサムウェアが流行っていたこともあり、そのような研究テーマを考えていたところでした。
そんな中で上原先生からランサムウェア自体の解析を行うのではなく、身代金になっているBitcoinのマネーロンダリング対策を行えば、攻撃者のモチベーションを下げることができるため、結果的にランサムウェアが減少するのではないかとアドバイスをいただき、研究を始めました。

就職の話

ー修士修了後はブロックチェーン関連の業務など行っているのですか?

廣澤:社会人になってから、ブロックチェーンの研究をしていた経験や知識を直接使うことはほとんど無いです。
でも、修士を修了した直後は、”もうブロックチェーンは飽きたかな”と思っていたのですが、社会人になってニュースなどでブロックチェーンやBitcoinの話題を見ると気になってしまいますね(笑)

ー就職活動の際も、特にブロックチェーンに着目したわけではないのですか?

廣澤:そうですね、特にブロックチェーンに関連する仕事をしたいという気持ちは生まれませんでした。
どちらかというと、インシデントハンドリングなどの研究室配属時に志していた”The セキュリティ”のような仕事をしたいと考え、現在の職場を就職先に選びました。

ー就職してからと研究室在籍時で、大きな違いなどはありますか?

廣澤:大学生の時はブロックチェーンを何に活用できるか、という研究テーマだったこともあり、手法から課題を考えていたのですが、社会人になると課題が先にあって、それを解決する手法を考える必要があります。つまり、大学時代と考え方を逆にしなければいけなかったため、そこが大きな違いであり、少し苦労した点でもあります。

社会に出て、上原研でよかったこと

上原研で良かった思うことを教えてください。

廣澤:上原研に限らないことですが、情報理工学の基礎がしっかりと身についている点はよかったなと思います。仕事で新しいことに取り組む際も、基礎がわかっていると簡単に始められるような気がします。
上原研でよかった話というと、さまざまな勉強会に参加させていただいたことでしょうか。
上原先生の顔が広いこともあって、学生時代から様々な技術勉強会やセミナーに参加していました。その時様々な企業の社会人の方のお話から、社会人の考え方や考える必要のあることなどを伺っていました。これらのお話から、仕事をやっていて突き進み過ぎてしまいそうなときに、少し立ち止まって考え直す癖ができた気がします。

ー上原研で思い出深いエピソードなどありますか?

廣澤:修士論文の提出後に上原先生にお食事に連れて行っていただいたことがあったのですが、上原先生がセキュリティを仕事にすることの魅力をお話いただいたことが印象に残っています。
その時先生は、「セキュリティの楽しさというのは、社会を変えられることだ」と仰いました。当時私は、セキュリティの仕事は企業や個人のセキュリティのレベルを上げることが目標だと考えていたので、社会を変えられるということまでは考えていませんでした。
しかし、詳しく伺うと、セキュリティという分野は、セキュリティを出発点として社会を便利かつ安全に変えられる力があり、そのようなことが可能な分野は少ないというお話で、先生が楽しそうに仕事をしていた理由がわかった気がしました。
将来、技術や知識を身につけていくと、上原先生が楽しんでいる世界に近づけるかもしれないということが、仕事のモチベーションの一つになっています。

上原研におすすめな人物像

ー廣澤さんが考える、上原研に入ることがおすすめな人物像を教えてください

廣澤:上原研を楽しめる人には、おすすめできますね。
やはり研究室の魅力は先生で、上原先生の授業やお話を楽しんだり、共感できる人は上原研を堪能できるのではないでしょうか。
私は、研究室配属前から上原先生にいろいろと相談に乗っていただいていて、波長が合うと感じていたので、迷いはありませんでした。

学生にアドバイス

ー最後に、学生にアドバイスをお願いします。

廣澤:これは上原先生が仰っていたことなのですが、ぜひ学生の間に好きな研究をするといいと思います。
社会人になると、好きなことだけやっていれば良いというわけにはいきません。会社のミッションなどに合わせて動くことになるため、研究室に配属されてからの1年半もしくは3年半が、好きなことを好きなだけ探求できる最後の時間になります。
上原研では、上原先生の守備範囲が広いので、多くの場合やりたいことをやらせてもらえますよね。自由なことができる時間を、先生や研究室にバックアップしてもらえる環境は、最高の学生生活の締めくくりになりますよ!

ーありがとうございました!
出社の際の廣澤さん。
インタビューへのご協力ありがとうございました!

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